現在の私はさしずめ若隠居様である。
相変わらず独身だが女の子の前では人類最上級の礼節を持って天衣無縫に振舞い、一族の中では一番常識に則って行動し、朽ち果てた自分の家をほとんど独力で再生中であり、少なからず快活で、今も昔も偉そうな人や偉そうなモノ、偉そうな組織や偉そうなシステムの悪口を言うのが大好きだ。
年より若く見られると悦び、流行を追って軽薄な格好をし、絶対に俗悪なものしか興味が無い顔をしている。
真面目なことは言わぬように心がけ、財的虚栄心や知的虚栄心を心の底から軽蔑し仕事以外ではほとんど人と会わない。
150歳まで生きるように心がけて、健康に留意している。
依頼された仕事は極力断らないように努め、たまの休日は小さな庭で合気道とジークンドーの訓練に励んでいる。
秘伝!!ジークンドー護身術―ブルース・リーが生みだした格闘術御舘 透大泉書店
顔は相変わらずあれだが、同年代の男女のぶよぶよの身體や鶏ガラのような身體に比べて、俺ほど立派な身体はないと思っている。
髪の毛もたっぷり残っており真っ黒、白髪は1本もない。
疲弊した顔、魚の死んだ目、覇気のない受け答え、責任ばかりで自由はない、どうあがいても実現不可能なノルマ・・・・全て無縁の生活である。
なんせ芸術家生活も15年だから、それほど周囲の人間を怖がって暮らすこともない。
というよりもうほとんど興味がない。
車もオートバイもファッションも、もう趣味としてやることはなくなり、とっくの昔にダンスもやらなくなり、趣味と言ったら、自転車を漕いで無料コンサートに行くこと、美味しいものを沢山食べること、可愛い女の子たちと散々バカ話をして’生きていること’’男であること’を確認することくらいだ。
家に居る時は朝から晩までパソコンに向かって、ある日、突然空から原爆が落ちてこないようにとせっせと小難しい文章を書いている。
時々、その調査に街に出かける。
仕事以外ではもう真面目な文章は書きたくない。
義理の付き合いもしたくない。
昔付き合いがあったような輩だろうが誰の顔も見たくない。
時は鐘なり、1分1秒も無駄には出来ない。
小難しい文章を書きながら、もう昔愛した比喩には飽きているが、悪習のようになっていて、時々比喩を使う。
性格分析や心理分析にも飽きて、自分以外のあらゆる人間を遙か上空から眺めている。
あの頃は俺ほど運から見放された男も錚々居ないだろうと悲嘆に暮れていたが今では逆で俺ほど強運強縁の持ち主も錚々居まいと日々神に感謝している。
塞翁が馬24record's24record's
あの頃はちょっとした物音、たとえば掛け時計の時報にすら、逐一反応し、ビクビク怯えていたものだが今では日本海の果てにある無人島で救いようがない間抜け供がドンパチ始めてもまゆ一つ動かさないだろう。
仕事がうまく捗った時は一日中幸福で南向きのバルコニーから入ってくる太陽光を浴びながら小指を立てて優雅に紅茶を啜っている。
今となっては私が信じているものは己の肉体と感受性、天命、何より同郷ないしは地域社会だけである。
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それ以外の概念、地位とか名誉とか経済力とか名声とか国家とか友情とか家族の絆とか愛とかそんな薄っぺらいものは何一つ信じていない。
そんなものを有難がり、頼りにして、縋っているような輩は誰であれろくな死に方をしないだろうと信じて疑わない。
毎晩、たった独りで極めて衛生的でふかふかの布団に包まれて深い眠りにつくが、時折、昔の顔見知りたちが夢に出てくる。
時代の大転換期に、運悪く、否、努力が足らず、捨石になった者たちである。
カッと両目を見開いてこう叫ぶ
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気をつけろ、いつか墜ちるぞ!
次はお前の番だぞ!
墜ちるって何処へ?
私は尋ねる。
彼らは答える。
地獄さ
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私はこう斬り返す。
ああ、是非とも落ちてみたいもんだ、その地獄とやらに。
別に今の生活と変わらんよ。
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おわり
相変わらず独身だが女の子の前では人類最上級の礼節を持って天衣無縫に振舞い、一族の中では一番常識に則って行動し、朽ち果てた自分の家をほとんど独力で再生中であり、少なからず快活で、今も昔も偉そうな人や偉そうなモノ、偉そうな組織や偉そうなシステムの悪口を言うのが大好きだ。
年より若く見られると悦び、流行を追って軽薄な格好をし、絶対に俗悪なものしか興味が無い顔をしている。
真面目なことは言わぬように心がけ、財的虚栄心や知的虚栄心を心の底から軽蔑し仕事以外ではほとんど人と会わない。
150歳まで生きるように心がけて、健康に留意している。
依頼された仕事は極力断らないように努め、たまの休日は小さな庭で合気道とジークンドーの訓練に励んでいる。

顔は相変わらずあれだが、同年代の男女のぶよぶよの身體や鶏ガラのような身體に比べて、俺ほど立派な身体はないと思っている。
髪の毛もたっぷり残っており真っ黒、白髪は1本もない。
疲弊した顔、魚の死んだ目、覇気のない受け答え、責任ばかりで自由はない、どうあがいても実現不可能なノルマ・・・・全て無縁の生活である。
なんせ芸術家生活も15年だから、それほど周囲の人間を怖がって暮らすこともない。
というよりもうほとんど興味がない。
車もオートバイもファッションも、もう趣味としてやることはなくなり、とっくの昔にダンスもやらなくなり、趣味と言ったら、自転車を漕いで無料コンサートに行くこと、美味しいものを沢山食べること、可愛い女の子たちと散々バカ話をして’生きていること’’男であること’を確認することくらいだ。
家に居る時は朝から晩までパソコンに向かって、ある日、突然空から原爆が落ちてこないようにとせっせと小難しい文章を書いている。
時々、その調査に街に出かける。
仕事以外ではもう真面目な文章は書きたくない。
義理の付き合いもしたくない。
昔付き合いがあったような輩だろうが誰の顔も見たくない。
時は鐘なり、1分1秒も無駄には出来ない。
小難しい文章を書きながら、もう昔愛した比喩には飽きているが、悪習のようになっていて、時々比喩を使う。
性格分析や心理分析にも飽きて、自分以外のあらゆる人間を遙か上空から眺めている。
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あの頃はちょっとした物音、たとえば掛け時計の時報にすら、逐一反応し、ビクビク怯えていたものだが今では日本海の果てにある無人島で救いようがない間抜け供がドンパチ始めてもまゆ一つ動かさないだろう。
仕事がうまく捗った時は一日中幸福で南向きのバルコニーから入ってくる太陽光を浴びながら小指を立てて優雅に紅茶を啜っている。
今となっては私が信じているものは己の肉体と感受性、天命、何より同郷ないしは地域社会だけである。


それ以外の概念、地位とか名誉とか経済力とか名声とか国家とか友情とか家族の絆とか愛とかそんな薄っぺらいものは何一つ信じていない。
そんなものを有難がり、頼りにして、縋っているような輩は誰であれろくな死に方をしないだろうと信じて疑わない。
毎晩、たった独りで極めて衛生的でふかふかの布団に包まれて深い眠りにつくが、時折、昔の顔見知りたちが夢に出てくる。
時代の大転換期に、運悪く、否、努力が足らず、捨石になった者たちである。
カッと両目を見開いてこう叫ぶ

気をつけろ、いつか墜ちるぞ!
次はお前の番だぞ!
墜ちるって何処へ?
私は尋ねる。
彼らは答える。
地獄さ












私はこう斬り返す。
ああ、是非とも落ちてみたいもんだ、その地獄とやらに。
別に今の生活と変わらんよ。

おわり