渥美清と1960年代
この記事を書いたのは・・・・
2012年5月29日・・・・
ああ・・・もう4ヶ月も経ってしまった・・・・
きっかけはこの書籍
おかしな男 渥美清小林 信彦新潮社
を読み返してからなんだけど当初は記事を10くらいは書くはずだった・・・・
が、出来なかった。
書きかけのが1つあるんだけど4ヶ月も放置されてる。
なんでもそうなんだけど1つのキーワードないしはキーパーソンで縦横無尽に広がる。
それが本当に面白い。
どこがそんなに面白いんだ?
って聞かれても面白いもんは面白いんだから説明しようがない。
随分昔の話になるが私が着目したのは
渥美清―太地喜和子―三國連太郎
この関係と言うかラインだ。
魔性の女優 太地喜和子 - シャルル・パナール博士の異常な愛情
2005年6月22日
今読み返してみると酷いクォリティだ・・・
だがこの記事はこの1年ばかり読まれまくり1000人以上は読んだものかと。
テレビで特集組んだらしいから。
太地喜和子は「魔性の女」の権化のような扱いを受けているが我々寅マニヤが激賞して止まないこの映画
第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け HDリマスター版 [DVD]渥美清,太地喜和子,倍賞千恵子,宇野重吉,前田吟松竹
で共演した渥美清当本人は太地喜和子のことが大嫌いだったという。
>いややわぁ、寅さん
映画を観た限り本当に息の合った演技で全く分からなかった・・・・
ゆえに映画など嘘八百なのだ。
人前では人の悪口を滅多に言わなかったと伝えられる渥美清が大嫌いと公言して憚らなかったのはなぜなのか?
映画俳優&女優の人間関係は映画の中で垣間見れる。
例えそれが嘘だろうと虚構だろうと。
第1作 男はつらいよ HDリマスター版 [DVD]渥美清,倍賞千恵子,前田吟,森川信,三崎千恵子松竹
>川又登 津坂匡章(現・秋野太作)(第1作、第2作、第4作、第5作、第9作、第10作、第33作)
>寅次郎の舎弟。
>寅次郎を「兄貴」として慕う。
津坂匡章は第1作封切り時、太地喜和子と結婚していた。
友情 [DVD]宮崎晃松竹ホームビデオ
>中村勘九郎(現・十八代目 中村 勘三郎)
「第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」撮影時、太地喜和子と付き合っていた。
邪推になるが撮影の合間にこの2人から何かを聞いたのではないか?
だがこの2件もそれ程、重要ではないと思う。
太地喜和子に心底惚れ込んでいたいた勘九郎はのろけただけだろうから。
生きざま死にざま (男のVシリーズ)三國 連太郎ロングセラーズ
やはり最重要のキーパーソンはこの人だろう。
「男はつらいよ」でブレイクする前の渥美清がリスペクトしてやまなかった俳優こそ三國連太郎その人だったからである。
その理由だが私はつい最近になるまで分からなかった。
三國連太郎は好きな俳優だったがその凄さを伝える映画を観たことがなかったから。
だが・・・
飢餓海峡 [DVD]三國連太郎,高倉健,伴淳三郎,左幸子,三井弘次東映ビデオ
最近、この映画を観て脱帽ってか凄まじい衝撃を受けた・・・・
一度は耳にしたタイトルだがビデオ時代はレンタル屋になかったから。
仮にあっても観たかどうかは疑わしい。
三國連太郎の最高傑作との声が少なくないが渥美清をいじめまくっていた伴淳三郎と左幸子の演技もハンパなく映画自体の完成度の高さは比類なく間違いなく日本映画界の金字塔である。
今後100年経ってもこの映画を超える日本映画は絶対に作れないだろう。
まともな感性があれば異論を唱えることは出来まい。
だって名演技をした準主役の高倉健がちょっと埋もれちゃってるんだから・・・・
洒落になってないって・・・
監督した内田吐夢も今後、もっともっと再評価していかなくてはいけません!!
そして
三國連太郎
稀代の大俳優でしょうね・・・
太地喜和子が惚れ込んだ理由も良く分かります。
釣りバカ日誌 [DVD]やまさき十三松竹
この映画のスーさんも好きだけど寅さん同様、そのイメージは一回捨て去った方が良いでしょう。
ホンの一面しか見せてませんから。
蛇の道はヘビか知らないけど売れる前の渥美清と三國連太郎は親交があったらしい。
5歳も年上の三國連太郎のことを渥美清は「連ちゃん」と呼んでいたらしい。
お互いその才能を認め合っていたんだろうが渥美清にとって三國連太郎はある種の理想ではなかっただろうか?
一つはその日本人離れした端正な顔立ちと体格、全身からにじみ出る
色気
2つ目は真っ先に五社協定を破りフリーになり会社や事務所の意向から自由になった「孤高の一匹狼」のカッコよさ。
何より
演技にかけるひた向きさ
だろう。
役作りの為に上の歯を全て抜歯した等、破天荒なエピソードには事欠かない。
もはや役作りの域を超えちゃっているのだ。
怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること佐野 眞一講談社
昨年、刊行されたこの書籍で本人の口から色々語られているが頷くこと実に多し。
三國連太郎の凄まじい演技力は彼のひたむきさや誠実さもあるがそれ以上に
歩んできた人生であり実体験
の賜物に他ならないから。
この1年くらい私は 色気 とか エロス について書くことが多かったのだが三國連太郎こそ日本映画史上最強の色気俳優な気がしてならない。
三國連太郎の器信太 一高双葉社
17歳のころこの映画を観てそれはそれは大きな衝撃を受けたものだが
フェリーニの8 1/2サントラカルチュア・パブリッシャーズ
この映画は「フェリーニの8 1/2 」である一方、「マルッチェロ・マストロヤンニの8 1/2」でもある。
彼なしにこの映画が’20世紀の金字塔’なりえたか?
甚だ疑わしい。
映画「甘い生活」の中でマストロヤンニはトライアンフTR4を乗り回して居たんだが同じ頃、三國連太郎はプライベートでポルシェ356を乗り回していた。
物の本によれば日本で初めてポルシェ・オーナーになったのは三國連太郎だと言う。
相当、絵になっただろうしあのジェームズ・ディーンにも負けていなかっただろう。
この車もブランドイメージがデフレ化し凡百の田吾作供が乗り回して久しいが
なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか (ペーパーバックス)辰巳 渚光文社
一度で良いから己を鏡で写して見ろ!
豚より醜いぞ!そんな身の程知らずの豚男が天下の公道でポルポル・・・・
閉話休題。
私を震撼させたのはやっぱり尋常でない
色気
である。
で、壮年期の三國連太郎を観て真っ先にマルッチェロ・マストロヤンニを思い出したのだった。
この2人は同じ系統の顔だから。
>古今東西 万古不易
最も共通しているのは
目
で、瞳の奥に言いようがない「哀愁」が漂っている。
寂しさ、諦観、虚しさ・・・・
どれも明るくポジティブな要素ではないが結局のところ男女とも色気は陰性であり闇の部分に他ならない。
これは努力で得られるものではない。
持って生まれた素質と体験である。
内海の輪 [DVD]松本清張,山田信夫,宮内婦貴子松竹ホームビデオ
では絶頂期の大女優岩下志麻と共演しているが役は老人、それも不能者である。
されど岩下志麻との濡れ場は強烈にエロく当時、30歳だった中尾彬に色気で圧勝しているから言葉も出ない。
ゆえに壮年期の三國連太郎がモテまくっていたことは否定しようがない。
これは本人は全く罪はない。
つまり花は咲いているだけで沢山の蝶々が勝手に飛んでくるだけなのだ。
三國連太郎当本人は決して女好きではなかった。
彼自身ずっとそれを言い続けている。
三國連太郎のインタビューを読んで感じるのは彼の「女嫌い」ではなくもっと根源的で闇の深い
女性恐怖
である。
太地喜和子と別れた後の対談の一節
>僕は臆病者ですから、のめり込む危険を絶対に避けたんです。
本当に生々しいがこれほど正直で誠実な発言もないだろう。
太地喜和子の魔性に対する最大の賛辞である。
こないだ遂にあの高倉健がNHKで特集を組まれ私もついつい観てしまったのだが健さんは今は亡き母親への尊敬と感謝の念を語っていた。
80過ぎても母は母なんだろう。
だが・・・・
三國連太郎はさにあらず。
女性恐怖と言う漆黒の闇は=実母に対する複雑な心境だったからである。
余りに生々しいので詳細は割愛するが最初の異性である母親に不信感を抱くと心の中にどうしようもない’漆黒の闇’が出来てそれが=女性恐怖になり反作用に対する作用が’尋常でない色気’を醸し出す、ようだ。
漠然としていたものがようやくくっきりしてきた。
雷蔵眠狂四郎 日本的な、あまりにも日本的な男の色気
2012年5月15日
>映画評論家の田山力哉によると、雷蔵が養子に出された経緯は次のとおりである。雷蔵の父は母が雷蔵を妊娠中に陸軍幹部候補生として奈良に移り、母は父の生家に留まった。しかし母は父の親族のいじめに遭い、母は父に助けを求めたが無視されたため、たまりかねて実家に戻って雷蔵を出産[2][3]。その時までに両親の仲は決裂しており、母は1人で雷蔵を育てるつもりだったが、間もなく父の義兄にあたる三代目九團次が雷蔵を養子として引き取ると申し出た。母ははじめこの申し出を断ったが最終的に同意、雷蔵は九團次の養子となった[4][3]。雷蔵自身が九團次の養子であることを知ったのは16歳の時[5]、実母との対面を果たしたのは30歳を過ぎてからのことだった[6]。
鶴田浩二を巡る愛憎劇
2011年9月4日
>戸籍上の出身地は、静岡県浜松市だが、実は兵庫県西宮市出身。父と母は結婚しておらず、鶴田の父である大鳥氏の家が鶴田の母との入籍を許可しなかったためである。鶴田の母は、鶴田を連れて静岡県へと移り住み、別の男性と籍を入れた。[1]母は、水商売をして生計を立てていたため、幼かった鶴田は目の不自由な祖母と狭い長屋で暮らしていた。祖母は、鶴田の母を産んだ際栄養失調によって失明。祖母との二人暮らしは極貧そのもので、洗面器で米を炊いていたという。
その後、祖母が逝去し母会いたさに、遊郭へ一人で向かったが客商売の仕事中だった母は相手にしてくれなかった。その上、義父は博打好きであった。
結局、ありふれた小市民的な温かい家庭環境の中からは周囲の女性だけでなく数多の大衆を虜にする’色気’など生まれやしないのだ。
スターとは即ち星である。
であるならなぜその星は煌煌と光を放っているのか?
周囲が真っ暗だからであろう。
例え一等星でも昼間に肉眼で認識できる輩は居ない。
皆、この事に気付くべきだ。
そして光と光はバチバチ火花を散らす。
本日休診 [DVD]井伏鱒二松竹ホームビデオ
この映画で鶴田浩二と三國連太郎は共演したのだが犬猿の仲になって二度と共演することはなかった。
三國連太郎の口からは鶴田浩二の難癖ないしはキャリア上の嫉妬的なことが言われているが実際にはもっと根深い何かがあったのではと邪推してしまう。
ここでもキーパーソンとして太地喜和子が出てくる。
若かりし日の太地喜和子は東映ニューフェイスで鶴田浩二と共演したのだが太地の初めての男性が鶴田浩二だったという説があるから。
太地喜和子伝説大下 英治河出書房新社
東映の看板俳優と駆け出しの新人女優の力関係を鑑みるとありえないとは言い切れない話である。
一流の役者、即ちスターは時に映画以上の’ドラマ’を実生活で演じているのだ。
スターなど死語になって久しく俳優・女優に限らず有名人が小粒化して久しいがそれは当然の話で三國連太郎なり市川雷蔵なり鶴田浩二なりに匹敵する壮絶な子供時代を体験した輩が居ないからである。
成長してからも然り。
だが、それは社会にとっては良いことである。
つづく